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2006年ベトナム経済・投資環境の総括
ジェトロ・ホーチミン事務所長
吉岡 賢治

 

1. 投資件数で過去最高を記録

日本からベトナムへの対内直接投資の件数は、113件と前年実績の107件を超えて過去最高を更新した。ベトナムの魅力は、「政治の安定」「治安の良さ」「日本人との類似性の高さ」「安定的労使関係」「優秀、器用、勤勉で安価な労働力が豊富であること」にある。日越共同イニシアティブの進展、WTOへの加盟、2007年1月から交渉が開始された二国間の経済連携協定(EPA)、そして既存の日越投資協定など日系企業が安心して企業活動できる土台は整ってきており、本年もベトナムへの投資ブームは継続すると思われる。


2. 投資環境は向上

2006年度の最も大きなニュースは、ベトナムが第150番目のWTO加盟国として承認されたことであろう。政府は、WTO加盟に向けて、外資企業に対する外国投資法並びに内資企業に対する投資奨励国内法及び企業法を、外資、内資区別なく適用される共通投資法・統一企業法に再編した。これらの法改正によって、外国企業は禁止分野を除いて原則自由に投資できることになった。管轄官庁が条件を設定している投資分野についても、米越通商協定で合意されたスケジュールよりも早いペースで条件が緩和されていく見込みである。また、合併企業に対する少数出資者保護の観点から定められていた経営会議の出席者によるいわゆる全会一致ルールが撤廃されるなど投資環境は向上していくと思われる。


3. 南部でヤマネコスト多発

ベトナムの魅力の一つである「安定的労使関係」を揺るがすヤマネコストが南部で多発した。ストの発生件数は、ホーチミン市だけでも100件を優に超え過去最悪であった。韓国系、台湾系企業で多数発生しているが、一部の日系企業もストの影響を受けた。しかしながら、ほかの国で見られるような赤い旗の乱立や、外部団体による過激な煽動も、破壊行為もなく、妥結後は、速やかに職場復帰し、うそのように平常勤務状態になったという。ほかの国と比べてストライキが穏やかで統制がとれていることは、ベトナムの投資環境としての優位性を揺るがすものではないと思われる。


4. 人件費の上昇

ベトナムのもう一つの魅力は「安価な労働力」であるが、2006年2月1日に外資系企業の法定最低賃金が約7年ぶりに引き上げられた。ホーチミン市の法定最低賃金は87万ドン(約55米ドル)と、改正前の62万ドン(約45米ドル)から約39%上昇した。日系企業の多くが大幅な賃金アップ(平均15?20%推定)を余儀なくされ、今後の賃金上昇に不安を抱いている。今後の経済成長率、外資投資動向を考えると、労働者賃金は年々大幅に上昇することが見込まれる。しかしながら、タイ、フィリピン、インドネシア、中国、インドと比べると依然賃金水準は最低であり、ベトナムの投資先としての優位性には変わりはない。