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2008年ベトナム経済の総括と今後の展望
ジェトロ・ホーチミン事務所長
吉岡 賢治

 

2008年のベトナム経済は山あり谷ありで大変激しい動きをした1年であった。  

07年末から始まった異常インフレは7月には対前年同月比で27%を超え、東南アジア最悪と揶揄された。貿易赤字は6月には対前年同期比3倍に膨れ上がった。市内の両替所等の非公式相場では1ドル=2万ドン直前までドン安が進み、ベトナム発の通貨危機までつぶやかれ始めた。しかし、国際的な穀物価格が下落に転じた7月以降、インフレは沈静化し、原油、鉄鋼などの資源価格の下落とともに、月々の貿易赤字も昨年並みに低下し、ドン・ドル非公式レートは消えて無くなり、国内市場は再び活気づき始めた。

ベトナム経済に対する不安は杞憂だったかと一息ついたところに、突然アメリカ発の金融危機と世界的な景気後退の嵐が襲ってきた。大変だと再び思った駐在員も多いと思うが、ドンの安定性はアセアン主要通貨の中で際立っており、また、国内消費は高級品を除き順調に伸び、経済成長率も減速はしているもののそれでも6?7%前後はあり、実感として景気はそれほど悪くなかった。年後半のベトナムのマクロ指標は比較的安定しており、数十年振りの世界規模の影響をまともに受けた多くの国と比べるとその影響は少なかったと言えよう。  

一方で、日系企業に関しては、自動車や家電、通信機器等の製造を行っている企業を中心に、前半の好景気から180度違った突然の需要減に大いに悩まされることになった。このような動きの激しい1年なると年初予想した駐在員は誰もいなかったであろう。

次に2009年の動きを予想してみたい。  

09年は、第二次投資ブームの終わりの年になるかもしれない。08年は海外からの直接投資認可額は600億ドルを超えて、過去最高だった一昨年の3倍以上の額に達し、記録を更新した。しかし、これは鉄鋼や石油関係の巨大投資があったからであって、投資認可件数でみれば対前年で2割近くも少なくなっているのである。ベトナムの投資環境の優位性は変わらないものの、世界経済の現状を考えれば、09年の投資認可金額が08年を上回ることはないであろう。

09年の日系企業の動きとして予想されるのが、既存工場の拡張、生産増である。円高回避の最も手っ取り早い方法は、生産拠点を日本からベトナムへとシフトさせることである。このような動きはすでに一部の日系企業で見られている。  

もう一つの動きとして予想されるのが「脱中国」である。アセアン自由貿易協定、08年12月に発効した日・アセアン経済連携協定、そして09年中に発効するであろう日越経済連携協定をうまく活用すれば、調達先をアセアン諸国や日本に切り替えても、それに伴うコスト増をある程度吸収することは可能かもしれない。  

09年は「小売元年」の年である。9,000万人弱の市場がいよいよ身近になる。中でもホーチミン市の市場としての魅力は大きい。ベトナム人の高級品嗜好と、日本ブランドに対する高い信頼感、そして中国製品嫌い。日本に有利な条件がそろっている。ホーチミン市は、販売拠点という魅力も加わることとなると思われる。